新人看護師の1年目 「辞めたい」はあなただけではない|データで読む現実と4つの選択肢
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最終更新日:公開日に設定(主要データは2026年3月公表の最新調査〔2024年度実績〕を使用しています)
新人看護師として働き始めて「辞めたい」と感じているなら、その気持ちは決してあなた一人のものではありません。日本看護協会の調査では、2024年度に新卒採用された看護職員の8.4%、約12人に1人が1年目の年度内に退職しています(2025年 病院看護実態調査・2026年3月31日公表)。
日本医労連など3つの労働組合が2023年5月に発表した大規模調査(回答35,933人、2022年10月〜12月実施)でも、「仕事を辞めたいと思うか」への回答で「いつも思う」24.0%と「ときどき思う」55.2%を合わせた79.2%が、辞めたい気持ちを抱えながら働いていました。労働組合の加盟組織を母集団とする調査のため全看護師にそのまま当てはまるわけではありませんが、「辞めたい」と感じること自体は統計の上でも珍しい経験ではありません。
出典:JILPT「ビジネス・レーバー・トレンド」2023年8・9月号、日本医労連 調査結果
この記事は、あなたに「頑張れ」と言うためのものでも、転職を勧めるためのものでもありません。国の公式統計と学術研究をもとに、つらさの構造を客観的に整理したうえで、続ける/働き方を変える/職場を変える/辞めるという4つの選択肢をデメリットも含めて等しく示します。まずは、あなたの悩みが一人よがりではないことを、データで確かめます。
目次
- 新人看護師はどのくらい辞めているの?離職率の公式データ
- 新人看護師が「辞めたい」と感じる理由 国の調査データで整理
- つらいのはあなたのせいではない 教育と臨床の「乖離」という構造
- 新人看護師がつらい時期を乗り越えるための対処法
- 新人看護師の選択肢 続ける/働き方を変える/職場を変える/辞める
- 新人看護師のよくある質問
- まとめ あなたのペースで4つの選択肢から考えよう
新人看護師はどのくらい辞めているの?離職率の公式データ

2024年度の新卒採用看護職員の離職率は8.4%で、約12人に1人が1年目の年度内に退職しています(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」・2026年3月31日公表)。全産業の新卒と単純比較はできませんが、年度別の推移と相対データで客観的な位置づけを確認できます。
新卒の1年目離職率は約9%(日本看護協会・病院看護実態調査)
日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月31日公表)によると、2024年度の新卒採用看護職員の離職率は8.4%で、約12人に1人が1年目の年度内に退職している。
同じ調査では、正規雇用の看護職員全体の離職率は11.0%、既卒採用の看護職員は16.1%でした。新卒のほうが既卒より低い背景には、新人研修の対象となることや受け入れ体制の有無といった要因が指摘されますが、調査はその理由を示していません。
| 区分 | 離職率(2024年度) |
|---|---|
| 正規雇用看護職員全体 | 11.0% |
| 新卒採用看護職員 | 8.4% |
| 既卒採用看護職員 | 16.1% |
調査概要:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」/2026年3月31日公表/詳細な調査期間・回収数は原典News Releaseで確認/出典:日本看護協会 News Release(2026年3月31日)、JILPT トピックス(2026年4月8日)
「約12人に1人」。あなたの職場の同期12人のうち1人程度が1年目で退職する計算です。退職は特別な失敗ではなく、毎年一定数がたどる道の一つにすぎません。
離職率の推移と全産業との比較
新卒採用看護職員の離職率は、2022年度の10.2%から2023年度は8.8%、2024年度は8.4%へ低下しました。日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」(2025年公表)によれば、2021年度(10.3%)・2022年度(10.2%)と10%台が続いたのち、2023年度は8.8%となり、コロナ禍前の2019年度(8.6%)と近似しました。
| 年度 | 正規雇用全体 | 新卒採用 | 既卒採用 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 11.8% | 10.2% | 16.6% |
| 2023年度 | 11.3% | 8.8% | 16.1% |
| 2024年度 | 11.0% | 8.4% | 16.1% |
調査概要:日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」(2024年公表)、「2024年 病院看護実態調査」(2025年公表)、「2025年 病院看護実態調査」(2026年公表)/出典:調査研究報告No.100、調査研究報告No.101、News Release(2026年3月31日)
他業種との比較では、厚生労働省の調査(2025年10月24日公表)で、令和4年(2022年)3月卒業者の就職後3年以内の離職率は大学卒33.8%、高校卒37.9%。3年以内に約3人に1人が離職する全産業の状況と比べれば、新卒看護職員の1年目離職率8.4%は突出して高い数字ではありません。ただし前者は3年間の累積、後者は1年目のみの数値で集計期間が異なるため、単純な優劣比較はできません。 つらさの実感は個人の問題ではなく、新社会人全体に共通する適応の難しさの一部です。
大学・短大・専門学校で違いはある?養成課程別の傾向
養成課程別にも差があることが、日本看護協会の2026年3月31日付ニュースリリースで示されています。2024年度採用の新人看護師の年度内離職率は全体で8.2%で、課程別では大学が7.5%と最も低く、短期大学3年課程が8.1%、看護師学校養成所3年課程が8.7%、准看護師が看護師を目指す2年課程が12.3%でした。
2年課程が全体の8.2%を約4ポイント上回る背景には、学生時代の臨床実習時間の違いや、准看護師としての就労経験の有無など、経歴の違いが影響している可能性があります。もっとも、養成課程別の数値はあくまで傾向です。個人の適性を出身課程で判断する材料にはなりません。
出典:日本看護協会 News Release(2026年3月31日)
このH2のまとめ:新卒の1年目離職率は8.4%(2024年度)で、約12人に1人。他業種の新卒とは集計期間が違うため単純比較はできません。
新人看護師が「辞めたい」と感じる理由 国の調査データで整理

看護管理者が考える新卒の退職理由は、2024年度は「健康上の理由(精神的疾患)」が54.6%で最多でした(日本看護協会・2026年3月31日公表)。適性への不安46.6%、実践能力への不安44.2%が続いており、あなたの悩みが統計上どこに位置するかをデータで整理できます。
退職理由の1位は健康上の理由(52.5%) 看護管理者の回答データ
日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月31日公表)で看護管理者に退職理由を複数回答でたずねたところ、「健康上の理由(精神的疾患)」が54.6%で最多となり、「自分の看護職員としての適性への不安」(46.6%)、「自分の看護実践能力への不安」(44.2%)が続いた。
この調査は、新卒採用看護師のうち年度末までに退職者が1名以上いた病院の看護管理者に、主な退職理由を複数回答で尋ねたものです。2023年度の同項目は回答1,021件で、最新年度の回答数は原典の該当表で確認してください。
| 退職理由(看護管理者の回答・2024年度) | 割合 |
|---|---|
| 健康上の理由(精神的疾患) | 54.6% |
| 自分の看護職員としての適性への不安 | 46.6% |
| 自分の看護実践能力への不安 | 44.2% |
| 上司・同僚との人間関係 | 27.0% |
| 他施設への関心・転職 | 23.0% |
| 参考:健康上の理由(身体的疾患) | 15.4% |
| 参考:他分野への関心 | 14.9% |
調査概要:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」/2026年3月31日公表/対象:新卒の退職者がいた病院の看護管理者/方法:複数回答/出典:JILPT トピックス(2026年4月8日)、日本看護協会 News Release
注意点がひとつ。この表は退職した本人ではなく、看護管理者が考える理由のデータです。 それでも上位3項目が「精神的な健康」と「自分への不安」で占められている事実は重い。「自分は向いていないのでは」「できるようにならないのでは」という不安は、退職者が出た病院の約半数の看護管理者が退職理由として挙げるほど、一般的な悩みなのです。
大規模病院ほど「精神的疾患」が退職理由になりやすい傾向
「健康上の理由(精神的疾患)」を病床規模別に見ると、2024年度は500床以上の病院で71.2%と突出して高い数字です。99床以下の最新値は原典で確認できるまで本記事では掲載を控えますが、2023年度には34.9%が選択されており、規模にかかわらずメンタル不調が退職理由として認識されていました。
| 病床規模 | 「精神的疾患」を退職理由に挙げた割合 |
|---|---|
| 500床以上(2024年度) | 71.2% |
| 99床以下(2023年度・参考) | 34.9% |
調査概要:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」の規模別集計(2024年度)および「2024年 病院看護実態調査」(2023年度参考)/紹介:JILPT/出典:JILPT トピックス(2026年4月8日)、JILPT トピックス(2025年4月16日)
大規模病院は救急搬送の受け入れや重症患者の割合が高く、新人に求められる実践能力の水準も高くなります。大規模病院でつらさを感じているなら、個人の弱さではなく、職場の構造的な負荷の大きさが背景にある可能性を、統計は示しています。
前年との比較 メンタル要因の経年変化
2023年度と2024年度の退職理由を比較すると、「健康上の理由(精神的疾患)」は52.5%から54.6%へ、「実践能力への不安」は41.6%から44.2%へ上昇しました。前年度も順位はほぼ同様で、増加傾向にありました(日本看護協会 2025年3月31日News Release)。
| 退職理由 | 2023年度 | 2024年度 |
|---|---|---|
| 健康上の理由(精神的疾患) | 52.5% | 54.6% |
| 適性への不安 | 47.4% | 46.6% |
| 実践能力への不安 | 41.6% | 44.2% |
| 上司・同僚との人間関係 | 29.8% | 27.0% |
| 他施設への関心・転職 | 21.8% | 23.0% |
調査概要:2023年度は日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」表26(2025年公表、n=1,021)、2024年度は「2025年 病院看護実態調査」(2026年公表)/いずれも複数回答。2022年度列は報告書No.100の該当表を原典確認できるまで掲載しません。
メンタル要因の増加は、新人個人の資質の変化というより、医療現場の業務量や人員配置など、環境側の背景の変化を示唆しています。あなたのつらさを「自分のせい」と結論づける前に、経年データが示す環境要因の大きさを知っておいてください。
【大切なこと】心身の不調が続く場合は
不眠や食欲の低下、出勤前の動悸や涙が止まらない状態が続く場合は、無理をせず産業医・主治医・専門の相談窓口に相談してください。退職理由の最多が「健康上の理由」である以上、心身を守る判断は逃げではなく、統計が示す最も合理的な対処の一つです。
このH2のまとめ:退職理由の1位は精神的疾患(54.6%)、2位は適性への不安(46.6%)。あなたの悩みは統計の中心に位置する、ありふれたものです。
つらいのはあなたのせいではない 教育と臨床の「乖離」という構造

厚生労働省のガイドラインは、基礎教育と臨床実践の間に乖離が生じ、それが新人看護職員の離職の一因であると指摘しています。新人のつらさは個人の能力不足ではなく、制度が前提とする構造的な問題です。国のガイドラインと学術研究、両面から見ていきます。
厚生労働省が認める「教育と臨床の乖離」とは
厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」(2014年2月)は、臨床現場で必要とされる看護実践能力と看護基礎教育で修得する能力との間に乖離が生じ、その乖離が新人看護職員の離職の一因であると指摘している。
ガイドラインの原文では、次のように記されています。
臨床現場で必要とされる臨床実践能力と看護基礎教育で修得する看護実践能力との間には乖離が生じ、その乖離が新人看護職員の離職の一因であると指摘されている。
この乖離を埋めるため、平成21年(2009年)7月の保健師助産師看護師法および看護師等の人材確保の促進に関する法律の改正により、平成22年(2010年)4月1日から新たに業務に従事する看護職員への臨床研修が努力義務とされました。つまり「学校を出てもすぐには一人前になれない」ことは、国が制度を作る前提にしている既知の現象です。
【図解:教育と臨床の乖離の構造】
学校で学ぶ知識・技術(基礎教育)と、現場で求められる判断力・優先順位づけ(臨床実践)の間には段差があります。新人研修はこの段差に「階段」をかける仕組みであり、段差があること自体は設計上の前提です。階段が整っていない職場でつまずくのは、登る人の問題ではなく階段の問題です。
リアリティ・ショックとは 誰にでも起こりうる適応反応
リアリティ・ショックとは、理想と現実のギャップによる心理的な落ち込みを指す言葉です。日本看護管理学会誌9巻1号(2005年)に掲載された研究(J-STAGE公開2018年)は、この現象について次のように述べています。
程度の差こそあれ看護師なら誰にでもリアリティ・ショックが起きうる
出典:「新人看護師のリアリティ・ショックの実態と類型化の試み」日本看護管理学会誌9巻1号(J-STAGE)
就職後の仕事内容がある程度予測できていてもリアリティ・ショックが起きるのは、学生から看護師への移行期に「組織の一員になること」と「専門職として成長すること」の2つが同時に求められるためです。落ち込みは異常な反応ではありません。ほぼ全員が通る適応プロセスの一部です。
1年目の流れ どの時期にどんな負荷が来るか
1年目の負荷は、時期によって種類が変わります。特定の月や割合を断定できる確かなデータは現時点で確認できていませんが、制度上の流れからは次の時系列が読み取れます。
【図解:1年目の負荷の流れ】
- 入職直後(春):集合研修が中心で学びの負荷が大きい時期
- OJT本格化(初夏〜夏):実際の業務を先輩と分担し、知識と実践のギャップに直面する時期
- 夜勤開始前後(夏〜秋以降):少人数での判断が求められ、生活リズムの変化も加わって心身の負荷が増す時期
- 独り立ち後:責任の重さそのものが負荷になる時期
「この時期にこんなつらさが来るはず」と構造を知っておくだけで、不意打ち感は減らせます。今つらい時期は、1年目の通過点の一つかもしれない。その可能性を、頭の片隅に置いておいてください。
このH2のまとめ:教育と臨床の乖離は国のガイドラインが指摘する構造的問題であり、リアリティ・ショックは誰にでも起こりうる適応反応。あなたの「できない」は個人の失敗ではありません。
新人看護師がつらい時期を乗り越えるための対処法

対処の基本は「職場内の支援資源を使う」ことと「個人でできるセルフケア」の両輪です。ただし職場環境の要因が大きい場合は個人の努力だけでは解決しないため、職場を変える判断につなげることも合理的な選択になります。
職場内で使える支援資源 プリセプター・教育担当者・産業医
1年目がまず使えるのは、職場の中に用意された支援の仕組みです。代表的なものは次の4つ。
- プリセプター:新人に専任でつく指導役。日々の業務相談の第一歩
- 教育担当者・看護部長:プリセプターとの関係自体が悩みの場合の相談先
- 産業医:不眠や疲労など、心身の症状がある場合の専門窓口
- 外部の相談窓口:都道府県の看護職相談窓口など、職場の外の第三者
ガイドラインはプリセプターシップ・チューターシップ・メンターシップ等の組織体制と、意図的な精神的支援の仕組みの必要性を示しています(厚生労働省 新人看護職員研修ガイドライン)。相談先は一つに絞る必要はありません。 機能しない場合は、段階的に窓口を変えて構いません。職場内支援とリアリティ・ショックの関連を検討した研究も報告されており、支えられる環境があるかどうかは、あなたの努力とは別の条件です。
個人でできるセルフケア ただし「根性論」ではない
個人側の要因にも研究があります。国立大学病院の新人看護師511名を対象とした調査(2025年1月公開)では、グリット(やり抜く力)が高い人ほどリアリティ・ショックの影響が小さい傾向が示され、「看護実践能力」や「仕事のやりがい、楽しさ」との関連が報告されました。
ただし、これは「根性があれば乗り越えられる」という意味ではありません。研究自体が「現在実施されている対策と並行して実施可能なアプローチ」と位置づける、環境整備あってこその視点です。個人でできることとして現実的なのは、睡眠時間の確保、休日の完全な休養、そして「できたこと・困ったこと」を日々メモする記録の習慣。記録は成長の確認にも、後で職場に改善を求める際の材料にもなります。
相談しても変わらない場合の次の一手
職場の人員配置や業務量が構造的に問題な場合、個人の努力には限界があります。2022年看護職員の労働実態調査を紹介したJILPTのレポート(2023年8・9月号)によると、4割の看護職員が職場にメンタル不調で休む・治療を受けている職員がいると回答し、辞めたいと思う理由は「人手不足で仕事がきつい」58.1%、「賃金が安い」42.6%、「思うように休暇が取れない」32.6%が上位でした。
出典:JILPT「ビジネス・レーバー・トレンド」2023年8・9月号
職場全体が構造的に疲弊しているなら、あなた一人が耐えても状況は変わりにくいものです。外部の相談窓口に状況を整理してもらうこと。そして次の章で示す「働き方を変える」「職場を変える」という選択肢につなげること。その2つを、視野に入れ始めてください。
このH2のまとめ:職場内の支援資源とセルフケアを両輪で使い、それでも変わらない構造的な問題は、環境を変える判断で対処するのが合理的です。
新人看護師の選択肢 続ける/働き方を変える/職場を変える/辞める

選択肢は「辞める」だけではありません。続ける・働き方を変える・職場を変える・辞めるの4分岐それぞれにメリットとデメリットがあり、あなたの状況に合った判断材料を等しく示します。
【図解:判断の4分岐】
- つらさの原因が「一時的な適応」なら「続ける」を軸に
- 原因が「部署や勤務形態とのミスマッチ」なら「働き方を変える」
- 原因が「職場の体制・風土」なら「職場を変える」
- 心身の限界や、看護職自体との適性の問題なら「辞める(休職を挟む場合も)」
という順で、軽い変更から順に検討するのが基本です。
今の職場で続ける 条件と見極めポイント
続ける選択が合理的なのは、職場の支援体制が機能しており、つらさが一時的な適応反応と見込める場合です。次のチェックリストで確認してみてください。
- プリセプターや教育担当者に相談できる関係がある
- 研修計画が用意され、段階的に業務が任されている
- つらさに波があり、休日には回復を感じられる日がある
- 1年後の自分が今よりできるようになっているイメージが持てる
こうした条件がそろう職場では、時期の経過とともに適応が進みます。一方でデメリットもあります。限界を超えて我慢を続けると、退職理由の最多である「健康上の理由」に自分が該当するリスクが高まる。 続ける判断は「もう少し様子を見る」ではなく、上のチェックを根拠に行ってください。
部署異動・勤務形態の変更で働き方を変える
職場を離れずに環境を変える方法として、部署異動、夜勤回数の調整、常勤から非常勤への切り替えなどがあります。看護部への相談で実現可能な場合があり、職歴を途切れさせずに負荷を下げられる点がメリットです。
デメリットは2つ。異動先の部署が必ずしも希望通りになるとは限らない点。そして、人員不足が構造的な職場では配置転換だけでは根本解決にならない点です。異動の申し出は弱さの表明ではなく、医療機関にとっても人材を手放さないための合理的な手段として認識されています。
職場を変える 病院以外の就業先も含めた選択肢の俯瞰
看護師の就業先は病院だけではありません。厚生労働省の衛生行政報告例(就業医療関係者)には、就業場所別のデータが収録されています。
| 就業先 | 特徴 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 病院(規模・診療科変更) | 急性期〜回復期まで幅広い | 規模や科を変えれば解決する場合 |
| クリニック | 日勤中心の職場が多い | 夜勤が負担の主因の場合 |
| 訪問看護ステーション | 1対1の看護、自分のペースで動きやすい | じっくり患者と関わりたい場合 |
| 介護施設 | 医療行為の頻度は病院より低め | 急性期の緊張感が負担の場合 |
| 行政・学校・企業 | 保健師・産業看護師など | 臨床以外の経路も視野に入れる場合 |
注記:表の特徴は一般的な傾向であり、施設ごとに業務内容・勤務形態は異なります(統計に基づく分類ではありません)。職場の体制や風土が原因のつらさは、環境を変えることで解決に至るケースが少なくありません。1年目の経験は転職先でも「新人教育の受け方を知っている経験」として生きる面があります。
看護師を辞める 退職前に確認すべきこと
退職も選択肢の一つですが、判断の前に確認したい点があります。1年未満の退職は職歴への影響が生じうるため、次の就職先でどう説明するかを先に考えておくこと。退職手続きでは、引き継ぎ期間を考慮した退職届の提出時期と、有給休暇の残日数の確認が実務上の論点になります。
デメリットとして、転職先でも基礎教育と臨床の乖離自体は同じように存在するため、環境を変えても1年目特有のつらさが完全になくなるわけではありません。心身の不調が退職理由になりそうな場合は、退職より先に休職や産業医への相談を検討する順序が安全です。
転職サイト・エージェントは使うべき?向いている人と自力で進められる人
転職サイトやエージェントの利用は、向き・不向きで分けて考えるのが現実的です。使うと効率が上がるのは、初めての転職で進め方がわからない人、勤務の合間に情報収集する時間が取れない人、職場の内情について客観的な情報が欲しい人です。
自力で進められるのは、希望する職場の条件が明確な人、ハローワークや直接応募の手続きに慣れている人です。利用する場合は複数社の求人条件を比較し、新人教育体制や夜勤の有無を求人票の段階で確認する。1年目の転職では、そこが特に重要な比較の観点になります。
このH2のまとめ:4分岐は軽い変更から順に検討し、各選択肢のデメリットまで確認してから判断してください。
新人看護師のよくある質問
入職1年目前後でよく検索される5つの疑問に、確認済みの調査データと制度情報をもとに回答します。個別の状況は職場や地域で異なるため、最終的な判断はご自身の状況にあわせて行ってください。
1年未満で辞めると次の就職に響きますか?
Q. 入職して数ヶ月ですが、1年未満で辞めると職歴として不利になりますか?
A. 影響が生じうるのは事実ですが、看護職は病院以外にもクリニック・訪問看護・介護施設と就業先の幅があるため、不利がそのまま行き場の喪失を意味するわけではありません。採用側が確認したいのは退職の経緯であり、職場環境の要因が明確で、次に求める条件が具体的に説明できれば、合理的な判断として伝わるケースはあります。退職理由のデータでも「他施設への関心・転職」は23.0%(2024年度)に挙げられており、1年目の転職自体は珍しいことではありません。
夜勤はいつ頃から始まるのが一般的ですか?
Q. 夜勤に入る時期が近づいて不安です。いつ頃から始まるものですか?
A. 開始時期は職場の研修計画によって異なりますが、多くは入職後数ヶ月のOJT期間を経て、見学・部分参加から段階的に始められます。厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」は到達目標を段階的に設定しており、研修計画に基づく段階的な移行が想定されています。不安が強い場合は、開始前にプリセプターや教育担当者へ研修計画の確認を求めましょう。
プリセプターに相談しても解決しない場合は?
Q. プリセプターとの関係自体がつらく、相談できません。
A. プリセプターとの相性や関係が悩みの原因になることはあり、その場合は窓口を変えて構いません。段階としては、教育担当者や師長・看護部長への相談、産業医への相談、都道府県の看護職相談窓口などの外部機関への相談と進められます。職場内支援の有無は1年目の適応を左右する要因として研究でも示されており、第一の相談先が機能しないことは、あなたのコミュニケーション能力の問題とは限りません。
「看護師に向いていない」のか判断する目安はありますか?
Q. 適性がないのではないかと悩んでいます。判断の目安はありますか?
A. 「適性への不安」は看護管理者が挙げる退職理由の2番目(46.6%・2024年度)に位置する、ごく一般的な悩みです。リアリティ・ショックは程度の差こそあれ誰にでも起こりうると研究で示されており、不安の存在は適性なしの証拠にはなりません。判断の順序としては、まず職場環境の要因(支援体制・業務量・人間関係)を確認し、環境を変えても長期的に改善が見込めない場合に、適性の問題として専門家と一緒に整理するのが現実的です。
休職という選択肢はありますか?
Q. 辞める前に休職という形は取れますか?
A. 心身の不調が続く場合、休職は退職より先に検討すべき有効な選択肢です。休職中に治療へ専念し、復職時に勤務形態の調整を受けられる制度を持つ職場もあります。制度の有無や手続きは職場の就業規則と産業医への相談で確認してください。
【大切なこと】心身の不調がある方へ
不眠、食欲の低下、出勤前の体調不良が続く場合は、無理をせず産業医・主治医・専門の相談窓口に早めに相談してください。休職・退職の判断は、健康を回復してからでも遅くはありません。
まとめ あなたのペースで4つの選択肢から考えよう
「辞めたい」気持ちは統計的に珍しくなく、つらさには教育と臨床の乖離という構造的な背景があります。続ける・働き方を変える・職場を変える・辞めるの4分岐から、あなたのペースで選ぶことができます。
この記事で確認したように、新卒の1年目離職率は8.4%(2024年度)、退職理由の最多は健康上の理由(54.6%)でした。厚生労働省のガイドラインも、新人がすぐに一人前になれないことを制度の前提として指摘しています。あなたのつらさは、あなたの失敗ではありません。
判断の順序は一つ。まず今の職場で使える支援を確認し、変わらなければ働き方や職場を変える選択肢へ。心身の限界が近ければ、休職や専門家への相談を最優先に。どの選択肢を選んでも、それは1年目を必死に生きたあなたの、正当な判断です。
参考文献
- 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」News Release(2026年3月31日公表)
- JILPT トピックス(2026年4月8日)
- 日本看護協会「2024年 病院看護実態調査 報告書」(2025年公表・推移比較用)
- 日本看護協会「2023年 病院看護実態調査 報告書」(2024年公表・推移比較用)
- 日本看護協会「2023年 病院看護実態調査」結果 News Release(2024年3月・推移比較用)
- 厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」(2014年2月)
- 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(2025年10月公表)
- 厚生労働省「衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」
- 日本医労連ほか「2022年 看護職員の労働実態調査」(2023年5月)
- JILPT「ビジネス・レーバー・トレンド」2023年8・9月号
- JILPT トピックス(2025年4月16日・推移比較用)
- 「新人看護師のリアリティ・ショックの実態と類型化の試み」日本看護管理学会誌9巻1号(2005年/J-STAGE公開2018年)
- 「大学病院に勤務する新人看護師のリアリティショックの現状とグリットとの関連」日本看護研究学会雑誌