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看護師の離職率は11.0%|2024年度最新データと辞めたいときの考え方

看護師の離職率は11.0%【2024年度最新】新卒・既卒・病床規模・都道府県別データと辞めたいときの考え方

日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%で、新卒採用者は8.4%、既卒採用者は16.1%でした。厚生労働省の令和6年雇用動向調査における一般労働者の離職率11.5%とほぼ同水準であり、看護師の離職率は全体では他産業と比べて突出して高いわけではありません。

ただし、11.0%はあくまで全国平均です。病床規模・設置主体・都道府県によって最大2倍以上の差があるため、平均値より「自分の職場タイプの数字」を見るほうが実態に近い。

区分離職率(2024年度)
正規雇用看護職員11.0%
新卒採用看護職員8.4%
既卒採用看護職員16.1%

出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月公表・対象は2024年度)/労働政策研究・研修機構(JILPT)の要約

「辞めたい」と感じること自体も、珍しいことではありません。日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」では、看護職としての就業継続意向を持つ人(「とてもそう思う」18.5%と「ややそう思う」44.4%の合計)は62.9%にとどまり、2021年の前回調査(67.6%)から低下しました。継続意向を明確に持つ人は約6割。あなただけが悩んでいるわけではない、という数字です。

この記事は、①最新データで離職率の実態を知る、②辞めたい理由を一次データで整理する、③続ける・職場を変えるそれぞれの判断材料を確認する、の3段構成です。離職率データは、日本看護協会が2026年3月に公表した最新調査(対象:2024年度)に基づきます。

最終更新日:2026年10月(2024年度データ・2026年3月公表)

目次

看護師の離職率は何%?最新データと正しい読み方

日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%で、新卒採用者は8.4%、既卒採用者は16.1%でした。厚生労働省の令和6年雇用動向調査における一般労働者の離職率11.5%とほぼ同水準であり、看護師の離職率は全体では他産業と比べて突出して高いわけではありません。

2024年度の離職率:正規11.0%・新卒8.4%・既卒16.1%

2024年度の離職率は、正規雇用看護職員と新卒採用者は前年度から下がりましたが、既卒採用者は前年度と同じ値でした。

区分2024年度前年度比
正規雇用看護職員11.0%0.3ポイント減
新卒採用看護職員8.4%0.4ポイント減
既卒採用看護職員16.1%前年度と同値

出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 結果 News Release」(2026年3月31日公表・対象は2024年度)

この調査は、2025年10月1日から11月17日に全国の病院8,022施設の看護部長に回答を依頼し、3,502施設から有効回答を得たものです(有効回収率43.7%)。全国規模の調査で、数値の信頼性は高いです。

離職率の推移:3年連続で改善傾向

直近3年の推移を見ると、正規雇用の離職率は2022年度から2024年度にかけて2年連続で低下しています(2021年度の11.6%から2022年度の11.8%へは上昇していました)。

年度正規雇用新卒採用既卒採用
2022年度11.8%10.2%16.6%
2023年度11.3%8.8%16.1%
2024年度11.0%8.4%16.1%

出典:日本看護協会「2024年 病院看護実態調査 結果 News Release」(2025年3月公表)ほか

新卒の離職率は10.2%から8.4%へ、2年で1.8ポイント改善しました。一方、既卒採用(転職してきた経験者採用)は16%台で高止まり。転職後1年目の定着が、構造的な課題として残っています。

「離職率」の定義と算定方法

「離職率11.0%」を正しく読むには、算定方法の理解が欠かせません。

新卒採用看護職員離職率は「当年度の新卒採用看護職員のうち退職した人数 ÷ 当年度の新卒採用看護職員数 × 100」で計算されます。つまり、新卒の離職率は「入職1年目のうちに辞めた人の割合」です。

一方、正規雇用全体の離職率は、平均職員数(年度当初と年度末の在籍数の平均)に対する退職者の割合。新卒と全体では分母が違うため、「新卒8.4%=新人の91.6%が定着」と「全体11.0%」を同じ土台で比べることはできません。

看護師の離職率は他の仕事と比べて高いのか

突出して高くはありません。 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」(2025年8月公表)によると、一般労働者の離職率は11.5%で、看護職員の11.0%とほぼ同水準です。

区分離職率
看護職員(正規雇用・2024年度)11.0%
一般労働者(令和6年)11.5%
全産業(令和6年)14.2%
医療・福祉分野(令和6年)16.9%
パートタイム労働者(令和6年)21.4%

出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」、厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」
※医療・福祉分野の16.9%はパートタイムを含む全就業形態の値です。看護職員の11.0%は病院の正規雇用のみのため、単純比較はできません。

新卒で比べても、看護師はむしろ低い側です。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」(令和4年3月卒業者・2025年10月公表)によると、就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で37.9%、新規大卒就職者で33.8%に上ります(解説記事)。新卒看護師の1年以内離職8.4%と単純比較はできませんが、「看護師だから異常に辞める」という見方はデータ上成り立ちません。

【このH2のまとめ】離職率は全体では他産業並み。ただし既卒16.1%の高止まりと属性差に注意が必要です。

職場タイプ別の離職率は?【病床規模・設置主体・都道府県】

日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」によると、2023年度の新卒採用看護職員の離職率は都道府県によって大きな差があり、最も高い香川県の15.2%から最も低い富山県の2.8%まで5倍以上の開きがあります。離職率は「看護師」という職業全体の数字だけでなく、勤務先の規模・設置主体・地域によって変わる指標です。

病床規模・設置主体・都道府県の3軸で、自分の職場タイプに近い数字を確認してください。

病床規模別:小さい病院ほど離職率が高い傾向

病床規模別では、規模が小さい病院ほど離職率が高くなっています。

病床規模正規雇用新卒既卒
99床以下12.6%12.1%21.8%
100~199床12.6%12.1%17.6%
200~299床12.2%9.4%15.6%
300~399床11.5%8.8%14.5%
400~499床10.4%8.2%11.5%
500床以上10.4%8.0%11.8%

出典:日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」(2025年3月公表・対象は2023年度)/調査報告書No.101

新卒で見ると、99床以下の12.1%と500床以上の8.0%で1.5倍の差です。小規模病院は教育体制や人員配置に余裕が少なく、新人が定着しにくい構造が背景にあります。

設置主体別:医療法人と公立で約2倍の差

病院を運営する主体によっても、離職率は大きく変わります。2023年度の正規雇用で最も高いのは医療法人の14.4%、最も低いのはその他公的医療機関の7.5%、次いで公立の7.7%で、医療法人とは約2倍の差です。

設置主体正規雇用の離職率(2023年度)
医療法人14.4%
公益社団・財団法人13.4%
私立学校法人12.5%
個人12.1%
社会福祉法人12.0%
済生会11.4%
国立10.2%
厚生連10.0%
日本赤十字社9.4%
公立7.7%
その他公的医療機関7.5%

出典:日本看護協会「2024年 病院看護実態調査報告書」(2025年公表・対象は2023年度)

既卒採用に絞ると、個人で24.4%、社会福祉法人で20.8%とさらに跳ね上がります。公立病院が低い背景には、待遇や制度の安定性だけでなく、地域内で他の選択肢が少ないという構造要因もあり得ます。「離職率が低い=働きやすい」と単純化はできません。

都道府県別ランキング:大都市部で高い傾向

2024年度の都道府県別データでも、大都市部で離職率が高い傾向が続いています。

順位都道府県正規雇用の離職率
高い1位大阪府・奈良県14.1%
高い2位神奈川県13.3%
高い3位東京都13.0%
高い4位千葉県12.9%

出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月公表・対象は2024年度)/結果 News Release

低い側は7%台の県が並び、上位と下位で約2倍の差です。ただし、離職率の高低には採用数や地域の医療体制など複合的な要因が絡みます。「ランキング上位の地域=働くべきでない地域」と短絡するのは避けてください。大都市部は求人数が多く転職しやすい環境にあるため、それ自体が離職率を押し上げている面もあります。

あなたの職場は平均より高い?3軸で確認する

【図解:3軸セルフ診断マトリクス】縦軸に病床規模(99床以下〜500床以上)、横軸に設置主体(公立・公的〜医療法人・個人)、奥行きに地域(大都市部〜地方)をとり、自分の職場が全国平均11.0%より高い側か低い側かを確認する図です。

確認の手順は次の通りです。

  1. 自分の病院の病床数から、規模別の平均値を確認する
  2. 設置主体(公立か医療法人か等)の平均値と照らす
  3. 勤務地の都道府県の値を確認する
  4. 3つのうち2つ以上が平均より高い側なら、「自分の職場は統計上離職が多い環境」と判断できる

たとえば「99床以下・医療法人・大阪府」なら3軸すべてが高い側です。逆に「500床以上・公立」で、勤務地が7%台の地域にあたるなら3軸すべてが低い側。自分の職場が「高い側」にあったとしても、それは職場の構造的な特徴であって、あなた個人の適性の問題ではありません。

【このH2のまとめ】離職率は規模・主体・地域で最大2〜5倍の差。自分の職場タイプの平均値を知ることが判断の出発点です。

看護師が辞める理由は?経験年数別に一次データで整理

新人の退職理由で最も多いのは「健康上の理由(精神的疾患)」で、中堅以降はキャリアプランややりがい、ライフイベントへと変わっていきます。経験年数によって「つらさの中身」が違う。一次データで整理します。

新人・1年目が辞める理由:最多は「健康上の理由(精神的疾患)」

日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」で、年度内に離職した新卒看護師がいた病院の看護管理者が挙げた退職理由の最多は「健康上の理由(精神的疾患)」でした。病床規模別では500床以上の病院で71.6%と突出しており、大規模病院ほど新人のメンタル面の負荷が大きい傾向が示されています。

この調査に答えたのは、離職した本人ではなく指導する立場の看護部長・師長です。現場を預かる管理者の目から見ても、新人が辞める最大の理由は「気持ちが折れること」。この事実は重く受け止めたい。

最新の2025年調査(対象:2024年度)でも同様の傾向が続いています。看護管理者が挙げた新卒の退職理由は次の通りです。

退職理由(複数回答・2024年度)割合
健康上の理由(精神的疾患)54.6%(うち500床以上は71.2%)
自分の看護職員としての適性への不安46.6%
自分の看護実践能力への不安44.2%
上司・同僚との人間関係27.0%
他施設への関心・転職23.0%
健康上の理由(身体的疾患)15.4%
他分野(看護以外)への関心・転職14.9%

出典:日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月公表・対象は2024年度)/JILPTの解説記事(2026年4月)

労働政策研究・研修機構(JILPT)も、「正規雇用看護職員の離職率は11.3%に/日本看護協会調査」(2025年4月)の中で、新卒看護職員の退職理由として精神的疾患が最上位に挙がり、病床規模別では500床以上の病院で特に割合が高いと伝えています。

「人間関係」は27.0%で4番目です。「新人が辞めるのは人間関係」という一般的なイメージより、適性や能力への不安、メンタル面の不調が上位に来ています。「人間関係が原因」と決めつけず、不安や心の不調も含めて自分の状況を整理してください。

もし今、眠れない・気分の落ち込みが続くといった状態があるなら、キャリアの判断はその後で構いません。 日本看護協会の「看護職のためのメンタルヘルス相談窓口」や、厚生労働省の「こころの耳」といった無料相談窓口が用意されています。

2年連続で同じ傾向。大規模病院ほどメンタル負荷が突出

この傾向は1年限りではありません。「健康上の理由(精神的疾患)」を挙げた病院の割合は、2023年度は500床以上で71.6%、最新の2025年調査(対象:2024年度)でも71.2%と、2年連続で7割を超えています。

大規模病院は新卒採用数が多く教育体制も整っている一方で、救急・専門医療の現場では業務の緊張度が高く、同期同士の比較も生まれやすい環境です。体制の充実と、新人のメンタル負荷の小ささは、必ずしも一致しません。

中堅以降は理由が変わる:キャリア・やりがい・ライフイベント

離職理由は経験年数で変わります。厚生労働科学研究の学術レビュー(令和2年度報告)によると、新人看護職員の離職要因は「リアリティショック」と「職場内の人間関係」の2点に集約されます。

リアリティショックとは、学校で学んだ看護と現場の現実とのギャップに衝撃を受け、適応困難に陥る現象のこと。これに対し中堅層では、人間関係や労働環境に加えて、キャリアプラン・仕事のやりがい・看護実践能力と自己効力感が関与すると整理されています。

出典:厚生労働科学研究「新たな看護職員の働き方等に対応した看護職員需給推計への影響要因」(2020年度報告)

同レビューは、看護職員の離職理由に「結婚」「妊娠・出産」「育児」というライフイベントが多くを占めることも指摘しています。キャリアとライフイベントの両立が離職の大きな背景にあることは、学術的にも裏付けられています。

小規模は離職率が高く、大規模はメンタル負荷が高い—規模で違うつらさの質

ここで、一見矛盾する2つのデータを並べます。離職率は99床以下の小規模病院で最も高く(12.6%)、500床以上は低め。ところが新人のメンタル起因の離職は、500床以上で71.6%と突出しています。

【図解:規模別「つらさの質」の対比構造】左に「小規模病院=人員の余裕が少なく、教育・業務負荷の面でつらさが出やすい(離職率高め)」、右に「大規模病院=体制は整うが、高度医療の緊張と同期比較のプレッシャーでメンタル負荷が高い(精神的疾患の割合が突出)」という対比図です。

つまり、規模によって「つらさの質」が違います。小規模病院でつらいのは構造的な多忙、大規模病院でつらいのは心理的負荷。「大きい病院に行けば楽」「小さい病院なら人間関係が濃くて安心」とは限らないことが、この並置から見えてきます。

看護師が働き続けるために重視していること

辞める理由の裏返しとして、「働き続けるために何を重視するか」のデータも参考になります。日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」(2026年3月公表)での上位4項目は次の順位です。

順位重視すること
1位業務や役割、責任に見合った賃金額
2位休みがとりやすい
3位職場の人間関係が良い
4位希望する働き方ができる

出典:日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」(2026年3月公表/ニュースリリース一覧)

賃金・休暇・人間関係・働き方。この4要素が定着の鍵です。 今の職場でこのうち何が欠けているかを見ると、「辞めたい」の中身が整理しやすくなります。

【このH2のまとめ】新人はメンタル・適性不安、中堅はキャリア・やりがい。規模によってつらさの質も異なります。

あなたの「辞めたい」を4要因でセルフチェック

辞めたい気持ちは「夜勤負担・時間外労働・ハラスメント・自己コントロール感」の4要因で整理できます。ここでのチェックは診断ではなく、自分の状況を言語化するためのものです。

辞めたい気持ちを生む4つの要因

日本看護協会「2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 報告書」(2020年公表)では、夜勤負担・時間外労働・暴力やハラスメント・仕事に対する自己コントロール感といった観点が、看護職の職場評価に関わる要因として指摘されています。本記事ではこれらを「4要因」として整理しました。

【図解:4要因の関係図】中央に「離職意向」、その周囲に①夜勤負担②時間外労働③暴力・ハラスメント④自己コントロール感の4つを配置し、4要因が悪い状態になるほど離職意向が高まる構造を示す図です。

同報告書は、時間外労働と離職意向の関係や、業務開始前の「前残業」・持ち帰り残業が労働時間として扱われにくい実態にも言及しています。

4要因セルフチェックリスト

いくつ当てはまるか、確認してみてください。あくまで状況を整理するためのリストです。

  • 夜勤負担:夜勤明けの翌日が休みになっていない/夜勤中に休憩・仮眠が取れていない
  • 時間外労働:タイムカードを押した後の残業が常態化している/申告できない前残業や持ち帰り業務がある
  • ハラスメント:上司・同僚・患者や家族からの暴言やハラスメントを受けている/相談できる窓口が機能していない
  • 自己コントロール感:シフトの希望が通らない/自分の看護の進め方を自分で決められない場面が多い

2つ以上に該当するなら、あなたの「辞めたい」は個人の気持ちの問題というより、職場環境の構造的な要因が影響している可能性があります。

データで見る4要因の裏付け

4要因は感覚的なものではなく、客観データでも裏付けがあります。

ハラスメントについては、日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」で、この1年間に就業先で暴力や暴言、ハラスメントを受けた看護職員が約半数に上ると報告されました(JILPTの解説)。夜勤負担と報酬の面では、夜勤手当が3交替制・2交替制とも2010年とほぼ同じ水準に据え置かれていることが、同協会の調査で示されています。

賃金全体についても、日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」(2025年6月公表)では、2012年の調査から基本給の増加が約6,000円(6,000円弱)にとどまるとされました。三交代制の準夜勤手当は4,567円(2012年調査では3,812円)で、夜勤手当の増加幅も12年で1,000円前後です。「業務や役割に見合った賃金」を最も多くの看護職が重視している一方で、処遇改善が追いついていない構造が浮かびます。

【このH2のまとめ】辞めたい気持ちは4要因で分解でき、いずれも個人の弱さではなく環境要因です。

辞める前に検討したいこと:職場の中で変えられるか

新人研修の実施は法律上の職場側の責務で、夜勤条件の交渉余地や、実際に離職防止に動いた職場の例もあります。「辞める」が唯一の選択肢ではありません。

新人の教育体制は職場側の責務

「教えてもらえないから辞めたい」と感じているなら、それはあなたの努力不足ではない可能性があります。

2010年4月から、新たに業務に従事する看護職員の臨床研修は法律上の努力義務になりました。病院等の開設者は、新人看護職員研修の実施や研修機会の確保に必要な配慮を行うよう努めなければならないと定められています。

出典:厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」(2014年2月)

研修体制が整っていないのなら、それは職場側の課題です。「プリセプターはいるが実質的な指導時間がない」「OJT(実務を通じた職場内訓練)が形だけ」という状況は、改善を求めてよい問題。我慢すべき問題ではありません。

夜勤の負担は交渉・調整できる場合がある

夜勤がつらい場合、「全部我慢するか、辞めるか」の二択ではありません。日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」では、夜勤を担い続けるための条件として、納得感のある夜勤手当の支給、夜勤明けの翌日の休日確保、夜勤中の十分な休憩・仮眠の確保が上位に挙げられています。

現在夜勤をしていない人の中にも、曜日・回数を選択できれば夜勤を担えると回答する層がいます。回数の調整、明けの翌日の休日確保、仮眠時間の確保は、いずれも交渉・調整の対象になる事項です。師長や看護部への相談という形で、具体的に何を変えてほしいかを伝える。それが第一歩です。

実際に離職防止に取り組んだ職場の例

職場環境を変える取り組みは、実際に行われています。愛知県看護協会の「令和6年度 医療機関等看護職員需要調査」(2025年7月公表・愛知県の調査)でも、有給休暇の取得促進や人員体制の見直しが、代表的な離職防止策として報告されました。

有給休暇の取得促進や人員体制の見直しは、職場への提案として現実的な内容です。「うちの職場でも有給取得率を公表してほしい」と声を上げることは、決してわがままではありません。

人間関係・ハラスメントが理由の場合にできること

人間関係やハラスメントが理由の場合は、次の順番で整理すると動きやすい。

  1. 記録する:日時・内容・発言者・その場にいた人を、日記やメモに残す
  2. 社内窓口に相談する:看護部の相談窓口やハラスメント相談窓口の有無を確認する
  3. 外部に相談する:社内で動かない場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーや後述の相談窓口へ

日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」では、約半数の看護職員が暴力・ハラスメントを経験していると報告されています。あなたが受けていることは「あなただけの問題」ではありません。記録は、社内・社外どちらに相談する場合にも有効です。

【このH2のまとめ】研修体制は職場の責務であり、夜勤条件の交渉や離職防止の前例もある。まず職場内で変えられるかを試す価値があります。

職場を変える場合に知っておきたい現実

看護職にとって転職は珍しいことではありません。ただし既卒採用者の離職率16.1%が示す通り、転職後1年目が最も辞めやすい時期です。場所を変えれば解決するとは限りません。

転職は珍しいことではない。ただし転職後1年目が最も辞めやすい

厚生労働科学研究の実態調査(2018年12月〜2019年2月調査)でも、転職やブランクを経験する看護職は少なくないと示されています。転職は、看護職のキャリアにおいて特別なことではありません。

ただし、転職後の早期離職が構造的に多いのも事実です。2024年度の既卒採用看護職員の離職率は16.1%。新卒の8.4%の約2倍で、正規雇用全体の11.0%を大きく上回っています。新しい職場への適応は、経験者にとっても負荷が高いのです。

「訪問看護・クリニックなら楽」とは限らない

転職先として「病院より楽そう」な印象を持たれがちな訪問看護にも、独自の離職要因があります。千葉県看護協会「令和4年度 看護職定着確保動向調査」(2022年8月公表・千葉県の調査)では、訪問看護ステーションの常勤看護職員の離職率は15.2%、非常勤は19.7%、既卒は20.4%でした。

出典:千葉県看護協会「看護職定着確保動向調査(訪問看護ステーション管理者)」(2022年8月・千葉県の調査)

常勤の離職理由の最多は「健康上の理由」34.0%で、次いで「メンタルヘルス不調」「職場の労働条件・労働環境への不満」が24.0%。常勤の在籍年数は「1年〜3年未満」27.8%、「1年未満」22.9%と、入職後早期の離職が目立ちます。

なお、同協会は令和6年度版の調査(2024年6月実施・2024年7月公表)も公表しており、常勤の在籍年数は「1年〜3年未満」30.1%、「1年未満」26.5%と、早期離職の傾向が続いています。一人で利用者宅を回る孤独感やオンコール対応など、病院とは異質の負担がある。 それを理解したうえで選ぶ必要があります。

離職率の高い職場を入職前に見極める方法

特定の施設の離職率は原則として公表されていませんが、入職前に確認できるポイントはあります。

  • 求人票の常備・非常勤の比率と募集頻度:同じ施設の求人が繰り返し出ている場合は定着率に注意
  • 新人研修・プリセプター制度の記載:制度の有無だけでなく期間や内容を確認
  • 夜勤体制:夜勤回数の目安、明け・公休の扱い、仮眠場所の有無
  • 面接で聞くべきこと:「直近1年の退職者数と理由の傾向」「新人の定着率」「有給取得率」

面接で離職率を直接聞くことは、失礼には当たりません。 定着に配慮している職場ほど、数字で答えられる準備があります。答えを濁す場合は、その回答自体が判断材料です。

相談先の使い分け:ナースセンター・ハローワーク・転職エージェント

転職を進める際の相談先は、目的で使い分けると進めやすい。

相談先特徴向いている人
ナースセンター都道府県ごとの看護師等無料職業紹介所。看護職の相談員が対応。ブランク・再就職相談に強い中立な立場で相談したい人。条件交渉を急がない人
ハローワーク求人件数が多く、公的機関としての信頼性がある地域密着で探したい人。失業給付の手続きも兼ねる人
転職エージェント非公開求人の紹介、条件交渉の代行、面接対策の支援希望条件が明確で効率よく進めたい人

ナースセンターは日本看護協会が各都道府県に設置する公的な無料職業紹介所で、再就職を考える人・就業中の人双方の相談に看護職の相談員が対応します(参考:日本看護協会 看護職応援サイト)。存在自体を知らない看護職も少なくないと言われているため、選択肢の一つとして覚えておくと役立ちます。

転職エージェントは効率を重視する人には有効ですが、複数社に同時登録して比較し、強引に進められない姿勢を確認してから利用すると失敗を減らせます。希望条件が固まっていない段階なら、まずナースセンターのような中立的な窓口で整理する手もあります。

【このH2のまとめ】転職は看護職のキャリアで珍しくない選択です。ただし既卒1年目の離職は多く、職場選びの見極めが重要です。

心身の不調があるときは、まず専門窓口へ

疲労や気分の落ち込みが続く場合は、続けるか辞めるかのキャリア判断より先に、心身の状態を整えることを優先してください。看護職専用の無料相談窓口が用意されています。

日本看護協会は、看護職専用のメンタルヘルス相談窓口を開設しています。相談方法・受付時間などの最新情報は、公式ページで確認してください。

【相談窓口の案内】
・日本看護協会「看護職のためのメンタルヘルス相談窓口」:看護職専用の相談窓口。受付時間・相談方法は公式ページで確認できます
・厚生労働省「こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)」:電話相談0120-565-455(月〜金17時〜22時、土日10時〜16時)のほか、メール・SNS相談を受け付け

受付時間は変更される場合があります。最新情報は必ず各公式ページで確認してください。

新卒の離職理由トップが「精神的疾患」という調査結果は、メンタル不調が個人の弱さではなく、この職場環境に構造的に伴うリスクであることを物語っています。一人で抱え込まず、専門家に相談する。それが最初の一歩です。

【このH2のまとめ】心身の不調はキャリア判断より先に。無料の専門相談窓口を活用してください。

看護師の離職率についてよくある質問

離職率の数値、新旧の比較、地域差、「やめとけ」と言われる背景まで、よくある5つの疑問に一次データで簡潔に答えます。

看護師の離職率は何%ですか?

2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%です。 新卒採用者は8.4%、既卒採用者は16.1%でした(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」、2026年3月公表)。正規雇用の離職率は2022年度の11.8%から2年連続で低下しています。

新人・1年目看護師の離職率はどれくらいですか?

2024年度の新卒採用看護職員の離職率は8.4%です。 これは入職1年目の間に辞めた人の割合を指します。病床規模別では差があり、2023年度のデータでは99床以下で12.1%、500床以上で8.0%と、小規模病院ほど高い傾向です。

看護師の離職率は他の職業より高いのですか?

全体では突出して高くありません。 令和6年の一般労働者の離職率は11.5%、全産業は14.2%で、看護職員の11.0%は同水準かやや低い水準です。新卒3年以内の離職率も、高卒就職者37.9%・大卒就職者33.8%(令和4年3月卒業者)と、他業界のほうが高くなっています。ただし、既卒採用(16.1%)や小規模病院・医療法人など、特定の属性では平均を大きく上回ります。「高いかどうか」は属性次第です。

離職率が最も高い都道府県・病院タイプはどこですか?

2024年度の都道府県別で最も高いのは大阪府・奈良県の14.1%で、次いで神奈川県13.3%、東京都13.0%と大都市部が上位を占めます。病院タイプ別では、2023年度データで設置主体は医療法人の14.4%が最高、病床規模は99床以下が高い傾向です。低い側は7%台の県が並び、上位と下位で約2倍の差があります。

「看護師はやめとけ」と言われるのはなぜですか?

背景には、夜勤・時間外労働・ハラスメントといった労働環境の構造的な課題がデータで示されていることがあります。新人の離職理由トップが「精神的疾患」であること、就業継続意向が62.9%にとどまることも、厳しい職業というイメージの根拠です。一方で、離職率自体は他産業並みで、働き続ける人が重視する条件(賃金・休み・人間関係・働き方)が整った職場も存在します。向き不向きは人によります。「やめとけ」という言葉をそのまま受け取らず、自分に合う職場環境かどうかで判断しましょう。

まとめ:数字は現在地を知るためのもの。次の一歩の考え方

【図解:行動導線フロー】「4要因セルフチェックで自分の状況を整理」→「職場内で変えられるか検討(研修・夜勤条件・相談窓口)」→「変えられない場合は転職の現実を確認」→「心身の不調がある場合はいずれの段階でも専門窓口へ」というフロー図です。

この記事のポイントは3点です。

  • 看護師の離職率は2024年度で11.0%と他産業並みだが、規模・主体・地域による属性差が大きい
  • 辞めたい理由は経験年数で変わり、メンタル不調は決して個人の弱さではない
  • 続ける・職場を変えるの両方に、データに根拠のある選択肢がある

離職率の数字は、あなたを追い詰めるためのものではなく、現在地を知るためのものです。 まずは4要因セルフチェックで自分の状況を整理し、次の一歩を考えてみてください。

【参考文献】

  • 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果 News Release(対象:2024年度)/2026年3月公表/News Release PDF
  • 労働政策研究・研修機構(JILPT)「正規雇用看護職員の離職率は11.0%/日本看護協会調査」/2026年4月/JILPT
  • 労働政策研究・研修機構(JILPT)「正規雇用看護職員の離職率は11.3%に/日本看護協会調査」/2025年4月/JILPT
  • 日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」結果 News Release(対象:2023年度)/2025年3月/PDF
  • 日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」結果/2026年3月/ニュースリリース一覧
  • 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果」/2025年8月/統計ページ
  • 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」/2025年10月公表/解説記事
  • 厚生労働科学研究「新たな看護職員の働き方等に対応した看護職員需給推計への影響要因」/2020年度/PDF
  • 日本看護協会「2019年 病院および有床診療所における看護実態調査 報告書」/2020年/PDF
  • 厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」/2014年2月/PDF
  • 千葉県看護協会「令和4年度 看護職定着確保動向調査」/2022年8月/PDF(千葉県の調査)
  • 千葉県看護協会「令和6年度 看護職の定着確保動向調査(訪問看護ステーション管理者)」/2024年7月/PDF(千葉県の調査)
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